未来の法体系を検証してみる(その2)_ゼロからマスターする要件事実
未来の法体系を検証してみる(その2)_ゼロからマスターする要件事実
税理2022年5月号より。
ゼロからマスターする要件事実 第77回
未来の法体系を検証してみる(その2)
仙台高等裁判所判事 岡口基一
未来の法体系を検証してみるとして、債務の履行遅滞に基づく損害賠償について。
具体的に確認してみようということで、建物引渡債務の履行遅滞での損害賠償請求権で、前回の続き。
民法415条1項における請求権発生のための実体要件は7つあると。
今回は、前回で説明が残された、3つのうち2つ。
【2】本文・但書に記載がない場合
→本文・但書に記載がないが、要件と解されているものがある★。
本件では2つの要件。
ただ、2つを説明すると言いつつ、実際にはもう1つ(⑤)は同様だからと省略されるので。
今回扱うのは「④期限までに建物を引き渡すことが可能であったこと」との要件1つだけ。
著者の説明は、ちょっと回りくどいので、私なりに整理してみると。
まず、実体要件と言いつつ、この要件は、実体法に規定がない要件となっている。
ただ、結論としては、「その反対事実が、履行遅滞に基づく損害賠償請求権の発生障害要件になる」と。
要するに、請求権を主張する側が主張立証するのではなくて。
相手方が抗弁として、主張立証すべきだという整理になる。
著者は、立証責任の分配で、発生要件と発生障害要件との分類を行うにあたり。
具体的な基準により立証の公平を実現すべきだとしつつも、結局は、明確化できません。
原則と例外という整理がされており、原則と言えるのが疑義を許さない場合のみ許されるとしますが。
なんか説明になっていませんよね、これ。
まだしも、債権総論の基本的な考え方を説明した上で。
このような考え方でとやるのならともかく、そういうの抜きで、お気持ちで書いているとして思えません。
ですが、著者は、もう、
「以上によると、未来の法体系においては、④は、損害賠償請求権の発生要件であり、かつ、それに該当する事実の存否が不明であるときは、その存在が証明責任規範により擬制されるということになります。」
とワープしてしまいます。
せめて、最低限でも、実体法と手続法との分離を純化できる前提の「未来の法体系」の話だから、くらいは言わないと。
理屈がないどころか前提もなく、もう読者、完全に置き去りだと思うんですけど……。
で、今回、結局、主観的な経験則を立証の公平と言っているだけで、正直説得力はほぼないと感じられます。
著者が言うように、1つの事例から、一般化できるような未来の法体系を臨むというのにはほど遠い。
次回は、
【1】本文・但書に記載がある場合
【1-2】記載があるが、立証の不公平が問題になる
→本文記載されているが、請求権の発生要件と扱われない場合がある★。
本件では1つの要件。
この部分で「③期限までに建物の引渡しがされなかったこと」との要件。
条文上は請求権の発生要件とされているが、実務家は反対事実を発生障害要件とすべきだと主張していると。
「とても面白いお話になりそうですので、次回をご期待下さい。」ですって。
さて、どのくらいの読者がついていけているのでしょうね。
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