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2022/04/26

未来の法体系を検証してみる(その2)_ゼロからマスターする要件事実

未来の法体系を検証してみる(その2)_ゼロからマスターする要件事実

 税理2022年5月号より。

ゼロからマスターする要件事実 第77回
未来の法体系を検証してみる(その2)
仙台高等裁判所判事 岡口基一

 未来の法体系を検証してみるとして、債務の履行遅滞に基づく損害賠償について。
 具体的に確認してみようということで、建物引渡債務の履行遅滞での損害賠償請求権で、前回の続き。

 民法415条1項における請求権発生のための実体要件は7つあると。
 今回は、前回で説明が残された、3つのうち2つ。

【2】本文・但書に記載がない場合
    →本文・但書に記載がないが、要件と解されているものがある★。
     本件では2つの要件。

 ただ、2つを説明すると言いつつ、実際にはもう1つ(⑤)は同様だからと省略されるので。
 今回扱うのは「④期限までに建物を引き渡すことが可能であったこと」との要件1つだけ。

 著者の説明は、ちょっと回りくどいので、私なりに整理してみると。

 まず、実体要件と言いつつ、この要件は、実体法に規定がない要件となっている。
 ただ、結論としては、「その反対事実が、履行遅滞に基づく損害賠償請求権の発生障害要件になる」と。

 要するに、請求権を主張する側が主張立証するのではなくて。
 相手方が抗弁として、主張立証すべきだという整理になる。

 著者は、立証責任の分配で、発生要件と発生障害要件との分類を行うにあたり。
 具体的な基準により立証の公平を実現すべきだとしつつも、結局は、明確化できません。

 原則と例外という整理がされており、原則と言えるのが疑義を許さない場合のみ許されるとしますが。
 なんか説明になっていませんよね、これ。

 まだしも、債権総論の基本的な考え方を説明した上で。
 このような考え方でとやるのならともかく、そういうの抜きで、お気持ちで書いているとして思えません。
 
 ですが、著者は、もう、

「以上によると、未来の法体系においては、④は、損害賠償請求権の発生要件であり、かつ、それに該当する事実の存否が不明であるときは、その存在が証明責任規範により擬制されるということになります。」

 とワープしてしまいます。
 
 せめて、最低限でも、実体法と手続法との分離を純化できる前提の「未来の法体系」の話だから、くらいは言わないと。
 理屈がないどころか前提もなく、もう読者、完全に置き去りだと思うんですけど……。

 で、今回、結局、主観的な経験則を立証の公平と言っているだけで、正直説得力はほぼないと感じられます。
 著者が言うように、1つの事例から、一般化できるような未来の法体系を臨むというのにはほど遠い。

 次回は、

【1】本文・但書に記載がある場合

 【1-2】記載があるが、立証の不公平が問題になる
    →本文記載されているが、請求権の発生要件と扱われない場合がある★。
     本件では1つの要件。

 この部分で「③期限までに建物の引渡しがされなかったこと」との要件。
 条文上は請求権の発生要件とされているが、実務家は反対事実を発生障害要件とすべきだと主張していると。

「とても面白いお話になりそうですので、次回をご期待下さい。」ですって。

 さて、どのくらいの読者がついていけているのでしょうね。

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