最高裁の解釈手法は文理解釈に加え体系的解釈を重視・目的論的解釈よりも優先させる姿勢_山岸秀彬氏
最高裁の解釈手法は文理解釈に加え体系的解釈を重視・目的論的解釈よりも優先させる姿勢_山岸秀彬氏
論説
法律行為の解釈と法解釈の交錯
―定款の解釈をめぐる裁判例を題材として―
前東京大学法科大学院客員准教授・判事
山岸秀彬
Vol.17 2022.12 東京大学法科大学院ローレビュー
http://www.sllr.j.u-tokyo.ac.jp/17/papers/LR17_yamagishi.pdf
経過措置型医療法人の退社時持分払戻しに関しての定款解釈で。
最高裁の解釈姿勢が見て取れると。
△
これに対し,最高裁は,第二審のような解釈手法を否定した。最高裁は,前記のような立法事実や政策目的自体は否定していないが,定款の文言からその意味内容が明らかな場合には,(立法事実や政策目的はともかく)これに忠実に解釈すべきであるとの姿勢を貫いているように思われる。そして,文言解釈に当たっては,問題となっている定款 8 条の文言に着目することはもとより,他の定款の条文にも目を向け,定款全体の構成,その中での各条項の関係にも着目している。すなわち,最高裁は,Y の定款 33 条が,解散時の残余財産の分配について「払込出資額に応じて」分配すると規定しており,同文言が(出資額を限度としない)出資割合に応じた分配を規定していることが明らかであることを指摘した上 65),定款 8 条と 33 条で同じ「出資額に応じて」との文言が用いられていることも考慮すると,定款 8 条の「出資額に応じて」との文言も,(出資額を限度としない)出資割合に応じた分配を規定したものであると解釈すべきであるとしたのである。
このような最高裁の定款解釈の手法は,文理解釈に加えて体系的解釈を重視するものであり,これらの解釈手法を目的論的解釈よりも優先させる姿勢を見て取ることができるのではないだろうか 66)。
1 最一判平成 22 年 4 月 8 日民集64 巻 3 号 609 頁
http://www.sllr.j.u-tokyo.ac.jp/17/papers/LR17_yamagishi.pdf#page=11
▽
なるほど。
過度の目的論解釈で、文理解釈や体系的解釈を犠牲にするのはどうなのですね。
納得できるバランス感覚かなと思います。
△
一般に法曹実務家は法解釈に関心が薄く,研究者は事実認定に関心が薄いということが指摘されている。しかし,実務家として,法解釈の方法に関心を深めることは,事実認定の精度を高めることにつながるかもしれないし,そこに事実認定論における理論と実務の架橋のヒントがあるのかもしれない。
http://www.sllr.j.u-tokyo.ac.jp/17/papers/LR17_yamagishi.pdf#page=16
▽
このあたりも納得。
もっと言えば、法解釈と事実認定は、行ったり来たりなのではないかなと。
事実認定を踏まえると、法解釈はこう考えるべきかもだったり。
法解釈を踏まえると、事実認定はこの方向性でとかだったり。
相互作用的に働くというのが正しいような気がします。
いや、法律家じゃないので、実務的な感覚としてというだけですが。
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