ダニング・クルーガー効果についての著者論文要約を翻訳すると
ネット上で、ダニング・クルーガー効果について言及するものがあった。
で、検索すると、原典がダウンロードできるようになっていた。
Psychology, 2009, 1, 30-46
Published Online December 2009 (http://www.scirp.org/journal/psych).
Copyright © 2009 SciRes. PSYCH
Unskilled and Unaware of It: How Difficulties in Recognizing One's Own Incompetence Lead to Inflated Self-Assessments
Justin KRUGER, David DUNNING
https://www.researchgate.net/publication/12688660_Unskilled_and_Unaware_of_It_How_Difficulties_in_Recognizing_One's_Own_Incompetence_Lead_to_Inflated_Self-Assessments
そこにあった要約が次。
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Abstract
People tend to hold overly favorable views of their abilities in many social and intellectual domains. The au-thors suggest that this overestimation occurs, in part, because people who are unskilled in these domains suffer a dual burden: Not only do these people reach erroneous conclusions and make unfortunate choices, but their incompetence robs them of the metacognitive ability to realize it. Across 4 studies, the authors found that participants scoring in the bottom quartile on tests of humor, grammar, and logic grossly overes-timated their test performance and ability. Although their test scores put them in the 12th percentile, they estimated themselves to be in the 62nd. Several analyses linked this miscalibration to deficits in metacogni-tive skill, or the capacity to distinguish accuracy from error. Paradoxically, improving the skills of partici-pants, and thus increasing their metacognitive competence, helped them recognize the limitations of their abilities.
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ワードで翻訳を掛けたものに手を入れたのが下記。
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要約
多くの社会的および知的領域において、人々は、自分の能力に対して過度に好意的な見方をしがちだ。このような過大評価は、部分的には、これらの領域に未熟な人々が二重の困難を被ることで生ずることを、著者たちは示唆している。これらの人々は、誤った結論に達し不幸な選択をするに留まらず、そのことを理解するメタ認知能力までも能力のなさ故に奪われてしまうのだ。4つの研究で、ユーモア、文法、論理のテストで下位4分の1の点数だった参加者は、テストの成績と自己の能力を大幅に過大評価していた。彼らのテストの点数は12%だったが、自分自身を62%だと推定した。この較正の誤りは、いくつかの分析により、メタ認知スキルの欠陥、または精度と誤差を区別する能力に関連付けられる。逆説的だが、参加者たちの能力を向上させメタ認知能力を高めることは、彼らが自分の能力の限界を認識するのに役立つのだ。
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国語の問題なら、
【1】著者がいう「二重の困難」とは何か。文中の言葉を使って説明せよ。
【2】「そのこと」とは何を意味するのか。文中の言葉を使って説明せよ。
なんてところか。
英語だと【1】は、構文故に、直後の文のことだと気づきやすい。
日本語だと、本当は、読者にわかるよう「つまり」を入れたいところ。
で、翻訳じゃなければ、もっとわかりやすく表現できるのに。
原文尊重の限界があるんだなぁと。
逆に言えば、国語の問題の多くは、書き手が悪いんだろうなと。
誤読を招かない書き方ができるのに、そうしなかったのだから。
ただ、翻訳の場合は、元の文章から離れすぎてはいけないという制約がある。
そうすると、誤読の可能性を知りつつも、仕方なくそういう表現にしてしまっていることもある。
おそらくは、そういうことなんだろうなぁ。
なお、ダニング・クルーガー効果についての紹介記事は。
下記あたりがわかりやすそう。
2019.04.22 Patti Shank自律的学習認知バイアス
初心者には適切な指導者が必要(Dunning-Kruger Effect)
海外記事 Written by 遠藤 ATD Japan Summit
http://www.ipii.co.jp/archives/blog/%E5%88%9D%E5%BF%83%E8%80%85%E3%81%AB%E3%81%AF%E9%81%A9%E5%88%87%E3%81%AA%E6%8C%87%E5%B0%8E%E8%80%85%E3%81%8C%E5%BF%85%E8%A6%81%EF%BC%88dunning-kruger-effect%EF%BC%89/
2019.08.14 3Stars認知バイアス
Dunning-Kruger Effect: 有害なパラドックス
海外記事 Written by 遠藤 ATD Japan Summit
http://www.ipii.co.jp/archives/blog/dunning-kruger-effect-%E6%9C%89%E5%AE%B3%E3%81%AA%E3%83%91%E3%83%A9%E3%83%89%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9/
この中で紹介されている下記は、ため息を付きつつ同意。
いや、私よりも、医師の方々が一番そう思うんじゃないかな。
「世の中には、学習に対する感情的な主張や、科学的根拠に基づかないソリューションがあふれています。学者として、学習に関する科学的な研究でわかっていることを一般の人に説明しても、見当違いな反論をされてしまいます。たとえば、「ハイライトをつける方法は効果が低い、非効率な学習方法である」と言うと、「ハイライトを使って試験に合格した知り合いがいるので、ハイライトが機能しないのはウソだ」という反論されるので、「そのようなやり方が必ずしも試験に合格した原因ではない」と説明しなければならないそうです。」
(学習心理学者のPaul A. Kirshner氏と職場の学習の専門家であるMirjam Neelen氏が書いたブログより)
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