債権と請求権は別物とする説その2_ゼロからマスターする要件事実
債権と請求権は別物とする説その2_ゼロからマスターする要件事実
月刊「税理」2023年4月号より。
ゼロからマスターする要件事実 第87回
債権と請求権は別物とする説その2
仙台高等裁判所判事 岡口基一
今回の説明は、久々に、心からなるほどと思いました。
いや、従来から疑問に思っていた部分がスッキリしました。
売買契約が成立すると直ちに売買債権=売買代金支払請求権が発生する。
民法ではこのように説明を受けるわけですが、非常に違和感があります。
まだやるべきことが終わっていないのに、何故請求権が生じるのか。
物の引渡が終わっていない段階で、どうして対価請求できるのか。
前々から、この点疑問でした。
少なくとも、税法などを理解する前提としてはほぼ無価値な説明。
いつも読む都度、モヤモヤしていた部分だったわけです。
ところが今回の話は、この点に解決を与えてくれるものでした。
結論から言えば、上記の考え方は修正できるだろうというのですね。
つまり、売買代金支払時期に売買代金支払請求権が発生すると考える。
売買契約成立時に、即売買債権=売買代金支払請求権が発生と言わない。
「常識」から離脱した考え方が可能だろうと。
このような考え方は、平成23年の新問題研究要件事実がベース。
司法研修所民事裁判教官室が、改説したのだと。
ただし、この書籍では、移転型契約そのものではなくて。
貸金返還請求権の事例で説明しているようですが。
考え方そのものは、貸金債権以外でも応用可能であり。
請負債権も、完成時に請負報酬請求権が発生すると考えられると。
同様の役務提供契約である委任・寄託も同様の構造が観念可能だと。
つまり、債権と債権的請求権を区別することで合理的説明が可能になる。
うん、今回の説明は以前からの違和感も解消できる説明です。
税法の前提として民法を学ぶ身には、非常にありがたい説明とも言えます。
これが理想の要件事実と関わるという話が次回らしいですが。
その点がどうのこうのは別にして、今回は非常に良かったです。
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