民事問題から行政処分するよう持ち込んだ人がいる?_クマ駆除猟友会問題
クマ駆除猟友会問題 ですが。
地裁判決文を読むと、あれ?という点があります。
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(4) 駆除後の経緯
ア Dによる被害申告
Dは,原告の本件発射行為で発射された弾丸が跳弾し,これにより自己の猟銃の銃床が破損したなどとして,原告に対し,金銭の支払を要求した。
原告がこれを拒否したところ,Dは,平成30年10月4日,砂川署に対し,原告の本件発射行為により猟銃の銃床が破損した旨の被害申告をした(甲13〔8枚目〕,乙7〔3頁〕,証人D〔34,35頁〕,原告本人〔21頁〕)。
イ 検察庁及び北海道知事の対応
砂川署は,Dの被害申告を受けて捜査を行い,鳥獣保護管理法違反,銃刀法違反等の罪により事件を検察庁に送致したが,検察庁は原告を不起訴処分とした。
また,鳥獣保護管理法では都道府県知事による狩猟免許の制度が設けられているところ(同法39条),北海道知事は,原告に対し,同法38条3項違反を理由とする狩猟免許の取消し(同法52条2項)は行わないものとした(甲3,16,弁論の全趣旨)。
ウ 本件処分
北海道公安委員会は,平成31年4月24日,原告に対し,本件ライフル銃の所持許可を取り消した(本件処分)。もっとも,本件処分においては,弾丸の到達するおそれのある建物に向かって銃猟をしたことのみが処分の理由とされており,Dの銃床が破損した事実は理由とはされなかった(前提事実(4))。
札幌地判令和3年12月17日 行政処分取消請求事件 令和2(行ウ)7
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/903/090903_hanrei.pdf#page=9
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これ、本当は原告とD氏との民事の紛争だったのを。
D氏が、被害届出を警察に届けた。
そう読めますね。
で、高裁に行くと、単に被害を受けたと申告しただけではなくて。
アイツ民家に向けて発砲もしてたんやで、とチクったことが事実認定された。
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(5) 駆除後の経緯
ア 被控訴人に対する捜査等
(ア) Bは、平成30年8月21日午前9時頃、被控訴人方を訪れ、銃床が破損した猟銃を示し、本件発射行為による弾丸によって破損したと主張してその修理を求めた。
被控訴人は、Bの銃床破損が本件発射行為によるものであることを認めず、被控訴人が加入していた保険を使って修理することを拒否したことから、Bは、自分が加入する保険を使って上記猟銃を修理することとなった。
Bは、その後被控訴人に対して金銭の支払を要求し、被控訴人がこれを拒否したことから、平成30年10月4日、乙署に対し、被控訴人の本件発射行為により猟銃の銃床が破損した旨の被害申告をした。
(イ) 乙署は、Bから、被控訴人が民家等の所在する方向へ発砲した旨聴取したことから、被控訴人について、鳥獣保護管理法違反等の被疑事実で捜査を開始した。
(略)
(ウ) 乙署は、平成31年2月13日、鳥獣保護管理法違反、銃刀法違反等の25 被疑事実で丙区検察庁に送致し、丙区検察庁は、同年3月頃、被控訴人を起訴猶予処分とした。
鳥獣保護管理法は、都道府県知事による狩猟免許の制度を設けているところ(同法39条)、知事は、被控訴人に対し、同法38条3項違反を理由とする狩猟免許の取消し(同法52条2項)は行わないものとした。
(略)
イ 乙署は、平成31年3月6日、公安委員会に対して、被控訴人の本件発射行為が銃砲所持許可の取消事由に該当するとして、取消処分を上申した。同公安委員会は、被控訴人の銃砲所持許可を取り消すことが相当であると判断し、平成31年4月17日、銃砲所持許可の取消処分に関し、被控訴人に対する聴聞を実施した。被控訴人は、この聴聞において、本件発射行為に先立ち周囲の安全を確認しており弾丸が民家に到達するおそれはなかった旨主張した。
公安委員会は、平成31年4月24日、被控訴人に対し、銃刀法11条に基づき、本件ライフル銃の所持許可を取り消した(本件処分)。
(前提事実(4)、甲2、8)
札幌高判令和6年10月18日 令和4(行コ)1 行政処分取消請求控訴事件
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/509/093509_hanrei.pdf#page=10
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警察は、起訴猶予処分にした上で、狩猟免許取消はやらないとした。
しかし、銃砲所持許可取消事由に当たるからと取消したと。
高裁は、安全性確保できずに打ったんだから、取消適法だと判断したと。
なるほど。
地裁は現実を見た判決文を出したのに、高裁は形式論で処理した。
危険性が少しでもあれば、処分はおかしくないやろと。
「確かに、控訴人を含む公的機関が、ヒグマ駆除について、従来より猟友会の献身的な活動に依存してきたという実態があることは否定することができず、近年、道内でヒグマによる被害が多発している状況の下、ヒグマ駆除の在り方については議論の余地があると思われるが、このことと本件処分が違法であるかどうかという問題は別であるから、被控訴人の上記陳述・主張を踏まえても、本件処分が違法でないとの上記結論は左右されない。」
この判決が社会的にどういう問題があろうが、知ったことではないと。
まぁ、そういう結論だすつもりなんだから、そうなんでしょうね。
私自身は違和感がありますが、こういう裁判になってこういう判決が出た。
常に100点の判決文書ける裁判官ばかりじゃない以上、仕方ないのかと。
もちろん、私が地元に住んでいたら、もっと違う意見言ってそうです。
何せ、命の危険があるのに、駆除して貰えない状況なんですから。
さて、話を戻すと、確かに警察の判断も高裁判断も相当疑問はありますが。
それより、この問題、着火点と、結果が全く結びついていないことが恐怖です。
元々、D氏は、自分の損失回復のために警察に届出したはずです。
ところが、その内容は、勝手に独り歩きして、火は燃え盛った。
発砲方向がおかしいからと、ライフル銃の所持許可は取消され。
それは高裁判決で適法とされた。
元々の猟友会の働きへの位置づけについて、猟友会自身が不満に思っていた。
それが、この判断で、一気に吹き出してしまった、ということなんでしょうね。
さて、今回、こういう問題が起きて、D氏は、どういう気持なのでしょう。
猟友会の仲間内でどういう状態になっているかも、わかりませんが辛い目かも。
そんなつもりはなくても、警察に被害届出を出すということは。
誰かの人生を歪める可能性がある、ということですね。
D氏の今の気持ちはわかりませんけれど。
この結末がわかっていたら、果たして、警察に届出を出したのでしょうかね。
そのあたり、全くわかりませんけれど。
自分だったらどうするか、答えが出ない問題です。
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